第56回変身力研究会/女性が活躍できる社会を創るための経営者の役割


 10月4日に「変身大賞受賞者と語る秋田の未来」をテーマに大町協働ビルで

シンポジウムを開催しました。本稿はプレゼンテーター3名のうち株式会社

太陽産業代表取締役藤井千雪氏の掲題をテーマにした講演の要旨です。

1.はじめに

 平成21年に第一回変身大賞を受賞した太陽産業代表取締役の藤井です。

私は嫁ぎ先が経営していた不動産賃貸業の弊社に入社し、子育てが一段落し

た平成12年に代表取締役に就任するとともに新規事業への進出を検討し、15

年にリユースストアを開店しました。

 現状の弊社事業は不動産賃貸、リユースストア・セカンドストリート大曲

店、秋田市の広小路に立地するリンパケアサロンの経営です。

社員19名のうち女性は13名、年齢構成も21歳から65歳までと多彩で、弊

社の経営はそのような多様な女性に支えられていると言っても過言ではありま

せん。

女性社員のほとんどが既婚者で、現在妊娠中の社員から、子育て真最中、親の

介護をしている社員まで、皆さん日々時間のやり繰りに頭を悩ましている状況

のようです。

40代の女性は、旦那様・子供2人・御両親の6人家族ですが、朝は旦那様と

子供たちのお弁当を作りながら別コンロでは朝食を作り、同時に洗濯機を回し

ながら掃除機を掛けて出社します。

夕方は会社から真っすぐスーパーで買い物をし、夕飯を作りながら子供たち

の宿題を見て、塾の送迎・食事・お風呂の世話、明日の仕度と寝るのはいつも深

夜とのことです。

休日もお父様が脳梗塞なので、お母様に代わって一日中介護をしながら6人

分の買い物をしなければならず、まさに寝ている時間も惜しんでの働き詰めの

毎日のようです。

それでも彼女たちは元気です!とっても元気なのです!!私は社員達を見て

いると、女性は多能工だと思います。多能工に知らず知らずのうちに成ってしま

うのかなと感じ入っております。

2.男女共生社会の実現に向けて

以前は、「女性の活躍」と聞くと女性だけの問題で、男性は関係ないと考える

風潮でしたが、「女性の活躍」は会社の経営にとっても非常に重要なことです。

女性消費者の心をどう掴むのかとか、女性が求めているモノやコトを考えな

ければ、ビジネスが成り立たない時代になりました。

 高度成長期には、どの人も画一的な働きをするのが経営の強みであったと言

われていましたが、現在、少子高齢化によって先ほどの弊社の女性社員の家庭で

の役割を、男性もせざるを得ない状況になっております。

それによって、仕事に全力投球できる男性社員の数が減り、我々中小企業には

会社の未来を担う人材の確保が本当に難しい時代になっております。

女性社員を雇うと出産・育児・介護等女性特有の役割が重荷と考える、今まで

の採用方針は通用しなくなり、女性管理職はもちろんのこと、女性の社会進出の

場が広がって行く方向にあることは間違いありません。

私は、秋田県中小企業家同友会という中小企業の経営者団体に所属しており

ますが、今年の5月に「男女共生部会きらめき」を立ち上げて、部会長をさせて

頂いております。

 この会を設立した目的は以下の通りです。

私たち中小企業を取り巻く環境は年々厳しさを増し、特に地方都市では18歳

人口の流出や少子化による労働力不足は深刻な問題であり、就業の形態やニー

ズも多様化していることで、企業側はこれまで以上に柔軟な対応が求められて

おります。

更に女性の社会的な進出に伴う経済的な自立と、男性の生活者としての自立

が求められております。このような状況の中で、女性と男性が安心して働き続け

られるためには、互いに自立した個人の生き方を尊重し、支え合うパートナーシ

ップの確立が不可欠ではないかと考えるに至りました。

この会での学びを通して「人」として幸せに暮らして行ける社会づくりを目指

し、女性と男性が互いに認め合い、高め合い、尊重し合える経営環境を整えて、

企業の更なる成長と発展を願い活動を進めて行こうと考えております。

3.真の働き方改革に向けて

先月の20日に「秋田県中小企業家同友会男女共生部会きらめき」が主催する

「秋田経営研究フォーラム2017」が開催されましたが、100人の参加者が集い

「真の働き方改革」について活発な討論を交わしました。

 講師をお願いした広島県中小企業家同友会の会員である株式会社オーザック

の専務取締役岡崎瑞穂様は、「同友会で学び続け実践する中で、順風満帆とは決

して言えない状況を幾つも乗り越えて来られたのは、社員が働きやすい環境を

模索し構築する中で『人を生かす経営』を実践したからであり、そのことが会社

の継続発展に繋がり、社員が満足できない会社には成長はない」と断言されまし

た。

 更にこの度、政府が提言した「働き方改革」について岡崎講師は、「労働力人

口の減少に伴い雇用形態も非常に多様化しているなかで、経営者が今考え行動

しなければならないのは、究極の顧客である社員の働きやすい環境を創ること

であり、多様な社員が多様な働き方を実現する為には見せかけの制度・施策では

なく、経営者と社員が本気で『経営改革』に取組む姿勢が必要である」と改めて

述べられました。

 最後に岡崎講師は、「社員即ち我が子が働きやすく幸せだと思える会社」を目

指し、更に進化してゆきたいと結ばれました。

ご講演から受けたのは、何とも言い難い人の温もりでした。社員が成長しない

のも、潜在能力が上がらないのも、会社の利益が上がらないのも全て経営者の責

任であるとの認識を強くしました。

また、真の「働き方改革」の根底にあるものは、一人の人間として社員即ち我

が子を想い労わる愛情であるとの、大きな気づきを頂いたフォーラムでした。

4.女性の働き方改革に向けた経営者の役割

女性が、新しい働き方に対応する上で重要なのは、何より女性の一人一人の

「考え方の変革」も必要とされています。

日本の家庭での女の子の育て方として、「皆と仲良くするのよ」「親のお手伝い

をして言うことを聞くのよ」「お勉強よりも気立ての良い、人に気遣い出来る良

い子になるのよ」と、言われ育てられて来ているのです。

「女性がリーダーになるのは風当たりが強い」「男性のアシスタント役の方が

楽だ」「言われた事をこなしていれば責任を取らなくて良い」等、社内でも結婚

までの腰掛と公然と求められていた時代もありました。でも今は、言われたこと

をやるだけなら人間よりAIやロボットの方が勝っています。

経営者として成すべきことは、社員一人一人の能力や人間力の多様性を組み

合わせ、新しい価値を生み出すことであり、様々な価値観・生活体験を持つ人達

を生かせるダイバーシティ経営を行うことです。

女性も男性に負けずにがむしゃらに働くのではなく、女性として社会を生き

てゆく中で、自分だからこそできる仕事を見出し積極的な姿勢を示してゆく事

が自分自身の改革にも繋がってゆくのではないでしょうか。

私たち経営者も大変だからと言って下を向いているのではなく、社員の働き

方を見つめ直し、どんな社員でも働きやすい環境づくりに取組んでゆく気概が

必要なのだと感じています。

そして元気な社員がお客様に元気を手渡し、地域を、更には日本を元気にして

行く、そんな社会づくりが私たち中小企業の経営者の使命ではないかと考えて

おります。

(文責:秋田人変身力会議 事務局長 永井健)