11月22日に協働大町ビルで福島智哉氏(㈲福島肉店専務取締役)を講師にお迎えして「コロッケ王子が仲間と描く男鹿のリノベーション」をテーマに第69回変身力研究会を開催しました。以下は講演の要旨です。
自己紹介 仲間紹介
私は昭和58年に男鹿市船川で生まれて、高校までは船川で育ちました。大学は東京に行きましたが、高校、大学と山岳部に所属し日本の山だけではなく、海外の山にも登りました.
大卒後、大手外食企業勤務等を経て、平成21年に帰郷し当社に入社しました。家業である福島肉店は大正7年に曾祖父が東京品川で創業しましたが、昭和14年に曾祖母が船川の出身だったことから当地に移転しました。
会社は両親、私と妻及びスタッフ10人で運営しております。看板商品は創業時からのコロッケですが、ローストビーフやカツサンドも人気がありますし、肉単体も福島の肉として、古くからのお得意様にお買い上げ頂いております。
加えてオードブルやお弁当も作っており、それらには肉に加えて鯛等の男鹿産の魚介類を入れることもあります。
また、カレーやハンバーグも半製品として県内の飲食店に販売しております。
オガニック地域構想を一緒にやっている仲間は、船川で「縫人」という船川シャツ等のオリジナルな衣料品を製造販売しているリーダー格の船木一人さんと五里合で「コーヒー工房 珈音」を経営している佐藤毅さんです。
3人の共通点は、一度県外に出て経験を積んで帰って来たことです。船木さん、佐藤さんは今の事業を1人で立ち上げた起業家ですが、私は後継者として家業を継いでおります。3人とも精神年齢が低いとか、気持ちが先に動いてしまうとか、周囲の皆様からご心配を頂いております。
オガニック地域構想
オガニックとは、男鹿に行こうという人が増えたら良いなということと、化学肥料や農薬、添加物を使用しないオーガニックな食料品や素材が増える地域にしたいということを掛け合わせた造語ですが、そういう意味を込めたオガニックをコンセプトに第1回「ひのめ市」を平成27年に開催しました。
オガニックの先はワクワクする男鹿と私達は定義しております。100年後の未来の子供達に何を残したいのか、そのためには僕らはどう生きたら良いのかを考えながら行動しております。
そのためにオガニック・ひのめ市で大事にしていることは、人と人との?がり、それも有機的で元から商店会にあった、持ちつ持たれつの関係や外で遊ぶ子供達を大人達が見守るような姿、そういうコミュニティを復活したいとの想いです。
今、男鹿で起こっていること
(1)ひのめ市
ひのめ市の会場は、当店の南側にある三角公園で、ここは昔から地元のお祭りやイベント会場として使用されたきたところです。集客が見込める大きな場所よりは、空き店舗が活用出来るこの場所でやろうと決めました。
物理的にも今ここにあるコミュニティを充実させることを目的に、ひのめ市を始めたH27年からずっとここで開催しております。
ひのめ市を始めた時は2~3百人程度の集客を見込んでいましたが、なんと1千人の来場者がありました。そのためパニック状態となり当店のコロッケを1個買うために20~30分待ちとなってしまいました。
2回目のH28年のひのめ市は3千人の来場者があり、コロッケを買うための待ち時間が40~50分となる等、高い人気を実感しました。
ひのめ市をやっているうちに、地元の郵便局や市役所の職員が目を輝かせて手伝ってくれるようになりました。その時に、人は楽しいと感じた時に動いてくれるのだなと思いました。
菅原市長も時々お見えになり励ましてくれますが、私達は市が進めた「道の駅オガーレ」のアンチテーゼとしてひめの市を始めたので、複雑な気持ちにもなります。
道の駅は将来の子供達にとっては、リスクのある箱物になる可能性がありますが、私達は見えない価値である地域住民の信頼関係に基づくコミュニティを残したいと考えていたので、道の駅には違和感があったからです。
ひのめ市に予想の5倍強の来場者があったので、アンケートしたところ自由記述欄に「オーガニックを世に出してもよいのですねとか、お話ししても良いのですね」との記載がありましたので、ひのめ市のコンセプトであるオーガニックへの関心の高さを感じ、私達のコンセプトが間違っていなかったことを確信しました。
(2)ひのめ商店
ひのめ市への入場者が爆発的に増えてきたので、マーケット的要素だけで終わったら、自分達の想いが伝わらないのではないかと考えて、毎月1回、ミニひのめ市と称して、当店の隣の元米屋であった空き店舗を活用してH28年からひのめ商店を開店することにしました。
毎月1回開店している「ひのめ商店」は11時開店ですが、オープン前から20人程のお客様が並ぶ等盛況で、餅つき等のイベントもやっております。店の2階は子供達の遊び場で絵本等を備えており、3階はライブ会場で知り合いの方に出演して頂いております。
出店者は希望者なら誰でもということではなく、オーガニックな食料品や素材を材料とした商品のみを扱うこととし、厳しく審査をしてパスした商品のみを販売しております。
(3) オガニック農業推進協議会
ひのめ市を3年程やって来た時点で、世の中のオーガニックへの対応に変化が生じているかを検証してみると、有機農家が増えているとか、有機栽培を行うための自家菜園が増えているとかそういう変化が感じられないので、自分達で一歩踏み込むことにして「オガニック農業推進協議会」を昨年、設立しました。
会の事業は①有機農家の栽培面積を増やすこと②有機農業を始める農家を支援することを目標に掲げてスタートしました。
慣行栽培(従来型農業)に取組んでいる農家にも、挑戦してみませんかと声掛けしております。例えばそば農家、滝の頭の水を使用したクレソン農家です。
また、子供達と一緒に収穫体験をしたり、オーガニック農産品の販路開拓のために東京に視察に行ったり、堆肥づくりの世界的な権威である橋本力男先生の講演会等有機農業に関する勉強会を年に数回開催しております。
推進協議会の会員は20数名でそのうちオーガニック農業に取組んでいる方は5名と少ないですが、ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ等の根菜類を栽培しており、ひのめ商店で販売し化世沢食堂等でも使用しております。
(4) 化世沢食堂
男鹿市の多目的文化施設であるハートピア1階の喫茶店が閉鎖するとの情報を掴んだので、挑戦したい方が挑戦出来る場にしたいと考えて、協議会がオーガニックに関心のある方に声掛けしたところ、9グループから応募があったので、地名にちなんで化世沢食堂の名称で、今年の5月に9グループがそれぞれの得意料理を日替わり定食として提供する食堂としてオープンしました。
グループ代表のMAMANIの畠山さんの声掛けで、市外から出店している美味しいと評判の和食、カレー、フレンチ等が日替わりで食べられるということで、市外からも連日お客さんが来ており、船川・男鹿が最近元気になったと感じられる要因になっております。
今後の展望
昨年、シービジョンズの東海林さんが中心になって開催した「商店街プロジェクト」に触発されて、今月1日に合同会社船川家守社を設立して駅前の元保険会社の空きビルのリノベーションを進めており、来春2月のオープンを予定しております。
ビルは2階建で1階は飲食と販売コーナーとし、ご飯スタンド,コーヒースタンド、私達が薦めたい食料品を扱うグロサリーセレクトショップの出店を考えております。
ご飯スタンドは当店が経営し当店の人気商品の他に昔人気があったソースカツ丼、ローストビーフ丼、ステーキ丼、チャーシュウ丼等の丼物を揃えたいと考えております。コーヒースタンドは珈音が受け持ちます。
2階には子育て世代のために子供達の遊び場を計画しており、五城目町の「んなのいえ」をイメージし、運営のノウハウも教えて頂きたいと思っております。
子育て世代の若いお母さん達が、やりたいことをやってお小遣いも稼げる場を提供したいと考えております。
共感や関係性で築く社会
オガニックをやっている私達の考えは、地域活性化とか地域のためというよりは、自分達が楽しくなければそのような活動は出来ないということです。
地域のためというよりは、大事な人や家族のための活動で、自己肯定感が低ければ出来ないことではないかと、そういう気持ちを共有して活動しております。
欲でも良いから自分だったらどうしたいかという志、野望を共有しております。
もっと具体的にお話しすると、一度外に出て戻って来た人達の特徴として、社会参画が積極的だと感じます。同じように、幼少時に家に籠ってゲームをやっていた人よりは、海や山で遊んでいた人の方が社会への関わり方が積極的だと思います。
自分の強み、自分が持っている商材、サービスで誰かが喜んでくれる、その積み重ねが地域のためになるのではないかと考えております。
そういう意味では、ひのめ市への参加者が増えていることに手応えを感じており励みになっております。
事業が成功するか失敗するかが判断基準ではなく、やっていることに共感する仲間がいて、その仲間と一緒に過ごす時間に幸せを感じるという共感資本主義が注目されておりますが、ひめの市の成功は、正に共感資本主義ではないかと思っております。
商売をやりながらオガニックに関わっている人達の業績は、私を含めて伸長しております。人との縁の広がりで伸びていると思っております。
本日ご出席の皆様もどうぞひのめ商店や加世沢食堂にいらして下さい。
男鹿が船川が変わろうとしている姿を見て頂きたいと思います。そして私達のやっていることを一緒に楽しんで下さい。
(文責:秋田人変身力会議 事務局長 永井 健)