9月26日に秋田市南通に立地する「亀の町ストア」で東海林論宣氏(㈱シービジョンズ代表取締役)を講師にお迎えして「ぼくらのまちのコンテンツづくり」をテーマに第68回変身力研究会を開催しました。以下は講演の要旨です。
- はじめに
私は1977年に美郷町で生まれ大曲高校を卒業して、東京経済大学に進学しました。在学中に始めた映像会社でのアルバイトをきっかけにグラフィックデザインに興味を持ったので、卒業後に飲食店を全国展開する外食大手の株式会社際コーポレーションに就職し、主に店舗の内装やロゴマーク、メニューのデザインを手掛けました。
自分が内装やメニューのデザイン等を手掛けた新店舗に、お客様が溢れる光景を見るのは楽しかったのですが、農家の長男だったので秋田で仕事をしたいと考えて、入社3年後に退職してフリーランスのデザイナーとして独立し、当座の仕事がある東京と取引先を開拓したい秋田を往復する生活を続けました。
- 秋田市に本拠を構える
秋田でやって行く目途がついたので、2006年5月にグラフィックデザイン、ウェブ、店舗や事務所の内外装等に関わるデザインや企画、運営等を手掛ける株式会社See Visionsを秋田市に設立しました。
グラフィックデザインでは動物園や美術館の告知ポスターや飲食店の看板、メニュー等のデザイン、ウェブはホテルやクリニックのホームページ等の制作を手掛けております。
秋田空港国内線ターミナルのレストランのリニューアルデザインや、本県初のプロスポーツチームとして誕生した秋田ノーザンハピネッツのロゴマークも制作しました。
- 南通亀の町狸小路のリノベーション
秋田市で暮らすようになって旭川西側の川反の飲み屋街が賑わっているのに反して、東側の亀の町地区が人通りも少なく空き店舗が多いことに気付きました。
地区の古老の話では昭和年代は、隣接する有楽町で映画を見ての帰り客や川反で飲んでの二次会向け寿司屋、近隣の住民向けの一杯飲み屋等が林立し賑わっていたのに、平成になってからは映画館、料亭、寿司屋等の閉店が続き、一杯飲み屋横丁の狸小路も空き店舗が多くなったので、暗くて怖い処になってしまったと嘆いておりました。
そこで誰もが集えてワイワイガヤガヤ酒を飲み、談笑できる安くて美味しい店を出せば人が集まるのではないかと考えて、飲食店の経営者に持ち掛けたところ断られたので、狸小路の空き店舗をリノベーションして2013年にスペイン風居酒屋「酒場カメバル」をオープンしました。
14年にはカメバルの向かいのマージャン店跡をリノベーションして、イタリア風居酒屋「サカナ・カメバール」(現在は閉店し他の業者に貸出中)をオープンし、18年にはパン屋「亀の町ベーカリー」を開店しました。
カメバル、カメバール2店の開店で狸小路が賑わうようになると他の飲食店も進出し、小路全体が明るくなり地域の住民からも喜ばれております。
- 「ヤマキウビル」のリノベーション
次に目を付けたのは同じ亀の町に所在する酒類卸売業を廃業して、空いていた3階建ての事務所ビルと2階建ての倉庫です。
最初に事務所ビルをリノベーションして1階を人が集まるカフェに、2階3階を賃貸事務所にするプランを事務所のオーナーに提案しましたが、けんもほろろに断られました。
そこでオーナーのご子息にお会いして、リノベーションして亀の町地区に賑わいを取り戻したいと訴えたところ理解して頂き、オーナーも頑張る若者と一緒にやろうと決断し、改修資金を賃借料で返済することを条件に、貸付して頂く等大変お世話になりました。
リノベーションした事務所ビルは15年10月に「ヤマキウビル」としてオープンしました。
ヤマキウビルの1階は「亀の町ストア」の店名の食料雑貨店を併設したカフェで、気軽に立ち寄れて飲食が楽しめるスポットとして、昼夜を通して老若男女で賑わっております。
依頼があれば結婚式の二次会や本日のように講演会等のイベント会場としても使用しております。
なお、販売品のなかには私の両親が栽培している「あきたこまち」もありますので、お帰りの際にはどうぞお買い求め下さい。私のささやかな親孝行と思っております。
また、「亀の町ストア」の開設を機に飲食販売部門を株式会社SPiraL
.Aを設立して分離し、当社の本社を3階に移設するとともに2階には税理士事務所等当社と関係の深い事業者に入居して頂きました。
5.「ヤマキウ南倉庫」のリノベーション
今年の6月には「ヤマキウビル」に隣接したビール等の酒類倉庫として使用していた2階建ての倉庫をリノベーションして「ヤマキウ南倉庫」としてオープンしました。
1階は中央のホールを囲むように小型スーパーや美容院、ネイルサロン、生花店、雑貨店等個性的な10店舗がテンナントとして入居しております。
ホールは屋根付きの公園をイメージして作っており、誰でも出入り出来るスペースで、大変お世話になったオーナーのお名前を頂いて「KAMENOCHO HALL
KO-EN」と名付けました。
「ヤマキウ南倉庫」のコンセプトは「SYNERGY=シナジー」で、様々なモノ、コト、ヒトが集まり交流し、集積・発信される拠点として、街を新たに創造する場です。
このためホールではトークイベント「DISCOVER CAMENOCHO」を定期開催する等、秋田の若い世代が集まる仕掛けを作り、参加した人達が秋田を元気にする仲間となる契機になればと思っております。
2階には秋田初の縫いぐるみの熊で有名なドイツのシュタイフ社や高級家具のアンテナショップが出店しました。
賃貸オフィスには当社と関連した設計事務所等6事業所が入居している他に、ワコーキングスペース(スペースを共有しながら独立して仕事を行う場)を設けており、テナント同士が語らってイノベーションが生まれることを期待しております。
この倉庫をリノベ―ションするに際しては、今まで使用していなかった秋田市の補助金を資金調達の一部として活用する予定でしたが、土壇場で不可となったのでオーナーに再度お願いして補助金分を借入しました。本当にオーナーにはお世話になったと感謝しております。
また、この補助金申請の段階で当社が立地する亀の町地域が「中心市街地商業集積地域」に新たにに指定され、空き店舗等への出店に際しては、出店費用が補助金の対象になったので、当社は補助金が受けられなかったものの地域のためには良かったと思っております。
- 終わりに
お蔭様で進出当初は空き店舗だらけだった狸小路も空き店舗がゼロになり、ヤマキウビル、倉庫のリノベーションで交流人口が増加したことで、亀の町の空き物件も減少しております。
そういう意味では亀の町エリアの価値は着実に上がってきております。
また、ヤマキウビルのオープン以降マスコミに取り上げられることも多くなったので、物件の持ち主や飲食店等を開業したい方からの相談も多くなって来ました。
私の強みは秋田で開業して10年余で築いた設計、工事、器材、食材販売業者等との幅広いネットワークとハードからソフト、建物の内装から箸袋まで提案出来るデザイン力です。
特に能力があって本気で起業を考えている方には、徹底したサポートを行いたいと考えておりますので、ぜひご相談下さい。
最近は県からの要請もあり「動き出す商店街プロジェクト」のプロデューサーとして県内を廻っておりますが、男鹿や美郷町では若い人を中心に空き事務者や空き店舗をリノベーションしたプロジェクトが動き出しております。
私の亀の町でのリノベーションが県民に理解され、現状を変えるために動き出す契機になることを祈念して講演を終わらせて頂きます。
(文責:秋田人変身力会議 事務局長 永井 健)