新年のご挨拶(著)秋田人変身力会議 会長 荒谷紘毅

秋田人変身力会議会長  荒谷紘毅

新年おめでとうございます。とは言え今年ばかりは例年のようにこだわりなく新しい年を祝う気持ちにはなれません。

はや一年にもなろうかという新型コロナウイルスによるパンデミックは一向に沈静化の兆しも見えず、政府が一都三県に二度目の緊急事態宣言を発する事態となり、鳥取に次いで感染者の少ない秋田も毎日のように感染が広がり、加えて県南部の記録的な豪雪は市民生活に大きなダメージを与えました。

これまで変身力会議は2008年の発足以来年6回の研究会を一度も休むことなく開催してきましたが、100年に一度のパンデミックの前には抗えず、6月の研究会は中止の已む無きに至りました。

その後秋田の感染状態を勘案しながら7月の総会、8月、11月の研究会を実施してまいりましたが、
全国的な感染拡大が続く中で本年1月の研究会は開催を断念せざるを得なくなり、誠に残念な思いであります。

しかし、こうした中で大きな課題となっているプロサッカーチームの専用スタジアム建設についての名古屋学院大学萩原准教授の学際的な分析に基づく講演(8月)や、国政、地方政治に係る女性を迎えての男女共同参画のシンポジューム(11月)は、タイムリーなだけではなく、エビデンスに基づく思考、行動がいかに大事であるかを考えさせるものとして、変身力会議らしい問題提起となったのではないかと思います。

今年は米国の政権交代があり、春には県知事や市町村長の選挙、秋までには衆院選が控えており、パンデミックのさなかではありますが国の内外は政治の季節となります。

そうした中で、国民の幸せを実現するべき政治家には何が求められるのかということを考える指標として、
国連の機関であるSDSN(持続可能な開発ソリューションネットワーク)が発表した世界の幸福度ランキング2020年版が注目されます。

6項目の説明変数の回帰分析による幸福度ランキングのベストテンの国の女性議員比率を調べるとすべての国が30%を超えているのです。
(日本の幸福度は62位で、女性議員の比率では14%の119位・秋田に至っては女性議員の比率は県政で11.6%、市長村で8.9%)
政府が旗を振っている「男女共同参画」は看板倒れとなっていますが、女性の政治参画の増加が国民の幸福度に連動するというのは紛れもないエビデンスではないでしょうか?

もちろん政治分野だけではなく、経済、学術文化の世界でも同様でしょう。
「男女共同参画」というのは「男女同権」という理念ではなく、幸福の実現という具体的な獲得目標の手段であると思います。
山形県では女性同士で知事選が戦われています。秋田の何が後進性なのか、それは秋田県民である我々の中に根付く後進性がもたらすものでしょう。
秋田人変身力会議が内なる後進性の克服と、それによって実現される地域社会の幸福度アップの先導役の一端を担えるよう皆様と共に頑張っていきたいと思います。

2021年1月

第71回変身力研究会・講演会報告/「秋田再生のカギは女性が持っている!」 ~なぜ女性が元気な地方は栄えているのか~

6月24日に協働大町ビルで元日経ウーマン編集長 麓 幸子 様を講師にお迎えして、「秋田再生のカギは女性が持っている」をテーマに第71回変身力研究会・講演会を開催しました。

以下はその講演要旨です

1.はじめに

大館市から特急に乗って来ました麓です。今日のテーマは女性活躍ですが、「女性が元気な地方は栄える」これは当たり前です。男だけが威張っていて、女性が虐げられている社会には未来はないです。

秋田県の人口は956,093人でそのうち女性は約50万6千人と男性より約5万6千人も多いです。女性が力を発揮しなければ秋田に未来はありません。

そういう状況下でのコロナ禍です。コロナ禍では何が問題なのかと云えば、意思を決定する場に女性の姿が見えないということです。国連はコロナ禍でのDV(ドメスティックバイオレンス)をもう一つのパンデイミックであると言い、この経済不況化の一番の被害者は女性であるとも言ってもおります。

またコロナ禍はコロナ戦争とも云われております。今までの戦争は男性が最前線で戦ってきましたが、医療や福祉従事者は女性が多く、今回のコロナ禍では女性が最前線で戦っている訳です。

しかし、医療や福祉の現場での決定権を握っているのは、男性が多いのではないでしょうか。コロナ禍でも最前線で戦っている女性の声が届かない体制になっております。

女性の活躍を測る際に私は一つの物差しをもっております。それは意思決定層に女性がどれだけ入っており、多様化しているかということです。

多様性がなぜ必要かというと、そのほうがリスクをキャッチする力が高まるからです。

新型コロナのような様々なリスクが今後起こることが想定されますが、意思決定層の同質性が高いと、同じ価値観や行動様式となり、情報をキャッチするアンテナの方向も同じということになりがちです。そうなるとリスクや変化を見逃してしまいます。

コロナ禍においては地方が見直されております。

これから予想されるウィズコロナの世界では都市化(密な社会)から開疎化(開放された社会=地方)に価値が移るだろうと慶応義塾大学の安宅和人教授が指摘しています。

人口密度を調べてみました。大館市は1㎢当たり76人ですが、私が昨年まで住んでいた武蔵野市は1万3千人でした。

コロナの感染リスクの少ないクリーンな地方は、新たな価値を持ちました。

今、コロナ禍で東京一極集中から地方分散への機運が高まっている中で、秋田県の魅力を高めるためには、物理的に開疎であることだけでなく、精神的にも開かれていることが必要だと思います。その人らしさを認めること、多様性を受容していることが必要です。もちろん、人権を尊重しているということは大前提となります。

しかし、東京から秋田に移住して来た方々はかなりの葛藤を抱えております。

例えば「女性は出しゃばるなよ」と言われた女性、「結婚していないのはおかしい」と言われた独身男性もいます。その人らしさを認めない古い価値観が横行しており、無言の抑圧があるのです。そういう生き苦しい空気を嫌ってって若者が都会に出て行くということもあると思います。人口減少という大きな課題を持つ地方の改める点だと思います。

2.自己紹介

自己紹介しますと、東京のメディアで30年以上働いていました。日経ウーマンの編集長や日経BP社の執行役員などを務めましたが、昨年、退社して故郷の大館市に帰郷、4月に共生社会構築を目指し、市長選に出馬して落選しました。敗北はしましたが、出馬に後悔はしていません。「女性が出てくれてよかった」と多くの方から励ましを受けました。

現在は大館を拠点に活動しております。地元で、デイサービスや訪問看護ステーションを運営している株式会社なが岡と、家業である火薬・実砲販売業の株式会社でんろくの取締役、共生社会を目指す一般社団法人敬友の理事長、東京に本社があります東証2部上場の物流関連企業ユーピーアール株式会社の取締役や母校筑波大学の非常勤講師も務めております。

また、今年度より、地域で男女共同参画を推進する「あきたF.F.推進員」にも就任しました。日経新聞が発行する地方創生・地域経営をテーマとする「日経グローカル」の直言コーナーの執筆者になりました。私の活動の拠点は大館市比内町扇田の長岡城跡で、そこを「比内ヒルズ」と名付け、昨年は「カフェふもと」を開設しましたが、8月から障がいのある方の就労を支援する「ふもとの家」をオープンする予定です。

3.日本は女性活躍の後進国

世界経済フォーラムが今年発表した2019年度の経済、政治、教育、健康の男女格差を分析したジェンダーギャップ指数で、日本は世界第3位の経済大国にも拘わらず153国中121位にランクされる等女性の活躍では後進国です。

120位がアラブ首長国連邦で122位がクウェートですから後進国振りは際立っています。

教育、健康ではそれ程ではないのですが、経済、政治面が遅れております。

女性の就業率が44%余と平均並みですが、就業者に占める管理職の割合が15%弱と極端に低いからです。

それでは秋田県はどうでしょうか。秋田県は女性の割合が53%と男性よりは5万6千人多いのですが、秋田県における女性管理職の割合は、県職員7.5%、民間企業5.9%と非常に低い割合になっております。

大館市議会を傍聴する機会がありましたが、議場の議員26名中女性は2名、市役所幹部は全員男性という残念な風景でした。

政府は2020年までに女性管理職の割合を30%までに高めるとの目標を掲げておりましたが、達成には程遠くなっています。進捗していない要因としてはWLB(ワーク・ライフ・バランス)を無視したビジネス慣行、女性の差別的雇用制度、家庭における性別役割分業が均衡を保ち、WLBを妨げる社会経済制度になっていることが大きいです。

女性が活躍出来ない構造は、専業主婦の存在を基準とした男性中心型の労動慣行、女性人材を育成できない男性管理職の問題、少数派であるゆえの女性の葛藤などが挙げられます

男性には当たり前のようにお手本であるロールモデルが存在していますが、女性はそうではありません。そうなると、将来自分がどのようなキャリアを築

けるのはわかりません。このような将来を見通せないことを、専門用語で「キャリアミスト」と云います。

女性に申し上げたいのは、あなたが不安になるのはあなたのせいではないということです。不安になる社会構造があるのです。その構造を打ち破り、新たな社会モデルを作り出すときなのです。私達は変化を待っているのではなく、変化に振り回されるのでもなく、変化を作り出す「チェンジメーカー」にならなければならないと思っております。

4.今の時代

・現代は変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の頭文字を取ってVUCAの時代、予測不能な時代とも云われています。DX(デジタルトランスフォーメーション・進化したデジタル技術でより良い生活へと変革する)もますます推し進められるでしょう。コロナ禍でテレワークや大学のオンライン授業、オンライン診療等が進捗しております。DXで働き方改革が進み女性が働き易い環境が整備されることは、良いことだと思います。大都市に住まなくても地方で働き、勉学出来る状況になりつつあります。

そういう意味では東京が有利で地方が不利との構図も変わりつつあります。

人口減少ですが秋田県の人口は昭和31年の135万人をピークに減少に転じ直近は95万人と最大値と比較すると40万人減少(-29.6%)しております。

高齢化率も33.8%と全国トップです。ちなみに大館市は38%です。人口減少時代には性差や年齢に関係無く、女性や高齢者の活躍が求められています。

開疎化で東京一極集中が是正され、地方分散の機運が高まります。一例として桐生市の織物業者が布マスクの生産に乗り出した事例をお話します。

女性の発案で織物の伝統技術を活用してデザイン性の高い布マスクを生産し地元の経済を回すとともに,競争の激しい東京を飛び越えて需要が見込める先進国等グローバルに販売を始めたのです。

マーケティングで重要なことは、高度な消費者マインドを持つ女性の視点です。何を造って何を売るかを考えるマーケティングの領域には、世界の購買決定権の64%握っていると云われる女性を入れるべきなのです。地方経済のためにも女性の力を生かすことがとても重要であるといえるのではないでしょうか。

5.女性活躍は成長戦略の柱

纏めとしてなぜ政府が「女性の活躍」を成長戦略の重要な柱にしたかをお話します。

企業の成長に必要なことはイノベーション(革新的な製品・製法で新たな価値を生む)とエンゲージメント(継続的に組織に貢献する意欲)です。

イノベーションを生み出すためには女性の視点が必要です。

女性のみならず多様な人材の能力を最大限に生かす「ダイバーシティ経営」を目指すべきです。

イノベーションと云えばノーベル賞級の技術革新を連想しますが、改善の延長でもあります。

イノベーションは既存の知識と知恵とそれと真反対にある知識と知恵がミックスされて生み出されると云われております。

イノベーションは意思決定層が50歳以上の日本人男性が多くを占めているモノカルチャーの職場からは生み出され難いと云われており、女性や障害のある方等多様な人材がいる職場では生み出され易いと云われております。

日本では女性の力は「眠れる資源」と政府の資料では表現しております。

そこで封印されている女性の能力を最大化するためには、全ての人が役割を持ち、その能力を発揮できる環境を整えることが重要です。

最大の人口減少県でかつ女性の管理職割合が6%前後に低迷している秋田県の喫緊の課題でもあります。

次にそのポストに最もふさわしい人が付ければ、パフォーマンスが上がるということです。

コロナ禍で成果を上げた台湾のIT担当大臣オードリー・タンは男性から女性に転換した38歳の若手政治家ですが、流通するマスクの過不足をITで管理しマスク不足を防ぐという画期的な施策を展開し、一躍世界的に有名になりました。

一方日本のIT担当大臣がITをコロナ対策に活用して成果を上げたとの報道は目にしておりません。

リーダーにふさわしい人は男性にも女性にもいますが、ほぼ男性が占めております。

それは公正な競争が行われず、女性が排除される仕組みになっているからです。

男性、女性、双方の中からそのポストにふさわしい人を選べば、台湾のIT担当組織のようにパフォーマンスは上がります。

また、組織メンバーのエンゲージメントも上がります。エンゲージメントは継続的に組織に貢献する意欲のことです。

ふさわしくない人がトップに就けば、パフォーマンスが落ちるしエンゲージメントが下がってしまいます。

組織のトップが一番注意すべき点です。私は女性をどんどんトップにすべきだと云っているのでは無く、公正な競争をして一番ふさわしい人がトップになるべきだと云っている訳です。

ダイバーシティマネジメントのメリットは、リスク管理能力や変化に対する適応能力が向上することです。

モノカルチャーのマネジメントでは、様々なリスクを見つけることは出来ません。

そこに色々なスペックを持つ人達を入れることによってリスク管理能力が向上する訳です。

イノベーションにはプロダクトイノベーションとプロセスイノベーションがあります。

プロダクトイノベーションとは、市場に適合した商品やサービスを開発することですが、その過程に購買決定権の64%を握る女性が参加すれば開発が容易になるわけです。

プロセスイノベーションとは、例えば、気付かなかった課題を可視化することでプロセスが改良されることです。

一例を申し上げれば、生産現場でも女性が活躍するようになったメーカーの工場で、男性よりも背の低い女性たちのために工具置場の高さを90センチほどに下げて工具を取りやすくしたそうです。

そうしたら、女性だけでなく男性も高齢の工員も工具が取りやすくなり、全体の効率が上がったそうです。これがプロセスイノベーションなのです。

6.地方を変えた女性達

私の著書に「地方を変える女性たち」がありますが、そこに登場する3人の女性を紹介します。

高知県の西村直子さんは調理師の資格を取って、世界中を渡り歩き料理の修行をして帰郷し、高知市にジビエ料理のレストランを開設しました。

長く滞在したニュージーランドでは鹿肉を料理する機会が多かったのですが高知に帰ったら鹿が害獣として扱われていることを知り、鹿肉レストランを開設しました。

高知の鹿肉は臭みもなくあっさりしているので好評です。害獣として殺処分せずに資源として活用することで、地域の活性化に貢献しています。

秋田でも熊肉の活用法を考えたら如何でしょうか。

次は広島県尾道市の豊田雅子さんです。大好きなヨーロッパの風景と似ている故郷・尾道に空家が増えていること知り、尾道らしい古い家や景観を守りたいとの一心で帰郷しました。

眺めの良い空家を購入して2年近い期間を掛けてリフォームしましたが、その模様をブログで発信したところ尾道に移住したいとの仲間が増え、その方々と「空き家再生プロジェクト」を立ち上げて精力的

に活動しています。空き家は負の遺産ではなく、地域資源ですと語っていました。

3人目は藤里町の社会福祉協議会会長を務めている菊池まゆみさんです。

引きこもりの人を就労者に変えた方です。菊池さんたちが全戸調査したところ引きこもり状態だった人が約110人いたそうです。

彼らはいろいろ場面で挫折をしていて仕事が出来なかったり、長続きしなかったりした。そのことで引きこもってしまった。

そのような方々に外に出ようと声掛けしましたが、何処に行けばいいのかとの声が返ってきました。

その声にはっとしたそうです。彼等は仕事を求めていたのです。

そこで町等の支援で「こみっと」というレストランを主体とした複合施設を開設し、彼等に働いてもらうことにしました。

4千人の町で110人位の人たちを就労者に変えた訳です。

その仕組みと菊池さんの情熱と志は素晴らしいと思います。

地方変えた女性達を取材し、印象に残っているのは、「地域の課題は宝」という言葉です。

課題解決を行政に任せるのではなく、皆で知恵を出し合って解決して行く、その行動が地域の絆を創ることであり、それが地域の宝だと言っていました。

その視点は地域づくりでとても重要だと思います。

7.日本はエンゲージメントが世界最下位層である

私は先ほどエンゲージメントとは継続的に組織に貢献する意志と話しましたが、17年5月にギャラップ社が発表したエンゲージメントに関する国際調査では、日本は熱意に溢れる社員は6%程度しかなく、139ヵ国中132位と最下位クラスでした。

この発表を聞いて大企業の幹部は、うちの会社は大丈夫かと青ざめたそうですが、ギャラップ社の会長は、21世紀以降社会人になった「ミレニアル世代」に、今まで効率的であった「コマンド&コントロール」(指令と管理)というマネジメント手法は効果が無くなったからだと分析しております。

「お前これをやれよ、文句言わずにやれよ」という古い手法が効かなくなったのです。

今までは同質性の高いモノカルチャーな組織だったので効果があったのですが、現在は、組織の構成員が多様化しております。専業主婦が当たり前だった時代から共働きが多くなり、育児や介護等の家事を夫婦で分かち合いながら生活する時代になったからです。

このように組織が変わって来ているのに、日本では未だ「コマンド&コントロール」で経営している企業が多い。それが社員の意欲を削いでいるのです。

育児や介護等で、男女を問わず時間等に制限が生じがちな社員が多くなっています。

この時代には、オレに付いてこい的なリーダーでは無く、高いコミュニケーション力でメンバーの意欲を高めるリーダーが必要になっているのです。

従来の管理型、支配型、恐怖と報酬の交換型のマネジメントから共感型、支援型、変革型のマネジメントに変えていかなければなりません。

近年、東京の企業では、1on1型ミーテイングが注目されています。部下と上司が1対1で話し合うことですが、このミーテイングで重要なのは上司が部下の話を傾聴することです。

1on1型ミーテイングで自慢話をするような上司もいるようですが、それは間違いです。

傾聴して対話することです。

コミュニケーションで相手の意欲を引き出すことです。

そういう意味ではコミュニケーション能力の高い女性のほうがリーダーに向いているかもしれません。

私の尊敬する方に山形県在住の関根近子さんという方がいます。

山形県で資生堂に美容部員として入社し、執行役員常務にまで昇進された関根さんから聞いたお話しを紹介します。

関根さんは、20代のころ、化粧品が売れなくてなくて仕事を辞めようかと思って先輩に相談したそうです。

そうしたら上司は「私達の仕事は化粧品を売ることではなく、化粧品を通して女性の幸せと美しさに一生貢献することですよ」と励まされたそうです。

先輩が資生堂のミッションを自分の言葉で話してくれたことで、視界がパット開けた思いがしたそうです。

そうして化粧品を売ることが自分の一生をかけるに値する仕事だと思ったそうです。

その後は育児、介護もこなしながら役員にまで昇進しました。

皆様も関根さんが若い時に出会ったリーダーのように、コミュニケーションで部下のエンゲージメントを高めるリーダーになって下さい。

服従したら報酬を与えるという交換型では無く相手の価値観を変革する変革型のリーダーになって下さい。

特に女性の皆様には、女性のロールモデルとしてイノベーションを起こし、エンゲージメントを高めるリーダーとして、新しい社会モデルを創る変革者として、人生100年時代を切り開くフロントランナーとしての役割を期待しております。

私を含めて人口減少の激しい秋田県に生きるものとして、イノベーションを起こすような社会であって欲しいですし、

皆が意欲的に生きられるような社会であって欲しいです。

地方に移住してもらうための成功ポイントとしては、ここはなんにも無い処です…では駄目で、自分達が住んでいる地域に誇りを持って欲しいですし、

また誇りを持てるような地域にしていかなければなりません。

女は出しゃばるなとか若者は口出すなではなく、個々人が尊重され多様性が受容される地域にならなければなりません。

そういう地域にするためにお互い頑張りましょう。

 

(文責:秋田人変身力会議事務局長 永井 健)

第70回変身力研究会/新春講演会報告/世界経済と我が国経済の動向

 2月12日に秋田ビューホテルで日本銀行秋田支店長の 村國 聡 様を講師にお迎えして、「世界経済と我が国経済の動向」をテーマに第70回変身力研究会・新春講演会を開催しました。以下はその講演要旨です

 

  1. はじめに

  今日はお集まり頂きまして有難うございます。先ほど会長から新型コロナウィルスの影響の話もとのリクエストを頂きましたが、新型コロナウィルスの影響については、未だハードデータが集まっていませんので、私どもの方に個別に入ってきている情報について、ご紹介出来ればと思っております。

  本日は、最初に世界経済の状況について、中国経済の状況も含めてお話ししたうえで、日本経済の状況や先行きのリスクについてお話し致します。

Ⅱ. 世界経済の概況

世界経済は、2018年から米中貿易摩擦やブレグジット等を巡る不確実性が高まっていましたが、ここにきて米中通商交渉が進展し、部分合意に至る中で、製造業PMIに改善の兆しが出てきているほか、輸出受注PMIも改善しています。今後、新型コロナウィルスの影響が長引かなければ、世界貿易量も少しずつ改善の方向に向かっていくと考えられます。

 世界経済の成長率は、IMFによる2019年の実績見通しは2.9%です。確かに世界経済の先行きを巡る不確実性から2018年の3.5%を超える成長から減速しているのは事実ですが、過去のリーマンショック時との比較でみれば、それほどひどい状況ではありません。また、新型コロナウィルスの影響を織り込んでいない本年1月時点の見通しではありますが、2020年の見通しについては3.3%の回復に向かうと予測しています。

  米中間の貿易摩擦を振り返ると、直近のピークでは20%程度の平均関税を互いに掛けていました。米国は第4弾として、12月にスマートフォン、ノートパソコン、ゲーム機等の関税を引き上げるとしていましたが、中国と部分合意に至り、発動を見送っています。今回の合意により平均関税率は10%台後半まで低下する見通しで、一旦休戦状態といえるかと思います。

今回の合意の背景ですが、中国側から高い報復関税を賦課された状況が長引けば、トランプ大統領の支持者が多い州の農家や、同じく支持者が多いラストベルトと呼ばれる州にある中西部の製造業の雇用者により大きな負担を強いることになるといった見方があり、こうした点を考慮して合意を急いだと考えられます。

  次に、金融政策ですが、先進国の金融政策は、昨年、米国を中心に緩和方向に動いており、世界経済を下支えしてきたと言われています。その後、米中通商交渉の部分合意やブレクジットの決定により、一旦世界経済を巡る不確実性は後退しているほか、先進国のインフレ率をみても、低位で安定しています。こうした中、昨年12月時点のサーベイでは見通し期間中の利下げは想定されておらず、先進国の金融緩和は一旦打ち止めが予想されています。本年2月11・12日に行われたFRB・パウエル議長の議会証言でも、「新型コロナウィルスの影響について、その規模や範囲について述べるのは時期尚早であり、今後の動向をより注視する」として、現段階では、一段の利下げ観測は出ておりません。

  一方、新興国は長らく景気が好調な中、高いインフレ率に悩まされ、金利を引き上げてきましたが、足もとは世界経済減速の影響もあってインフレ率は落ち着いています。従って、相対的に利下げ余地があるとみられています。実際、新型コロナウィルスの影響が拡がった2月に入り、タイやインドネシアでは利下げを行っています。

このような状況ですが、個別セクターをみますと、IT関連財では、アナリストによるEBITDA(金利・税金・償却前利益)の収益見通しはかなり強気で、回復を予想する見方が拡がっている状況です。この他、自動車や資本財についても、緩やかながらも回復に向かうとの見方となっています。

さらに、世界経済について、昨年来、確かに製造業は減速の動きが拡がった訳ですが、他方で、各国のサービス業PMIは好調を維持しているほか、小売・サービスやGAFAに代表されるITサービスの収益(EBITDA)も改善の見通しとなっているなど、非製造業の業況は確りとしており、製造業と非製造業との間でデカップリングの状態が続いています。

  こうした背景には、先ほど申し上げた先進国による金融緩和に下支えされる形で、消費者コンフィデンス(消費者信頼感指数)がここ10年でもっとも高い水準で維持されていることがあります。因みに、IMFでは、2019年の各国の金融緩和が行われなければ、2019年と2020年の世界経済の成長率をそれぞれ0.5%ポイント押し下げたであろうと推計しています。

  次に新型コロナウィルスの影響についてSARSとの比較でお話し致します。2003年に流行したSARSは、感染者が8,096人、死亡者が774名で致死率は9.6%と高かったこともあり、各国で警戒の動きが拡がりました。これに対し、今回の新型コロナウィルスの感染者は1月29日時点で6千人余ですが、SARSと比べて急激に感染者が増えているのが特徴です。他方、致死率をみると2%程度とSARSより低くなっています。こうした中、新型コロナウィルスへの現時点の中国政府の対応ですが、団体旅行の停止、春節後の操業開始の延期を打ち出している中で、政府系金融機関による低利融資や税制面の優遇措置等の様々な景気刺激の対策を打ち出しています。今後10日程度、あるいは2月中に、中国国内での感染者数の増加あるいは面的な拡がりが収束し、操業再開・正常化の方向に向かうかどうかが、注目ポイントと考えています。

Ⅲ. 中国経済

  中国経済の2020年の成長率は、IMFの直近1月時点の見通しでは6.0%ですが、今回の新型コロナウィルスの影響により、少なくとも第1四半期(1~3月)は、年率で3%程度まで落ち込むのではないかとの見方もあります。今後の影響次第ですが、2020年の成長率は5%台に低下するのではないかとの見方が多いようです。

  中国の経済成長率は年々スローダウンしておりますが、それでも2019年の小売売上高は前年比7~8%の伸びを確保しています。スマートフォンをみると、ファーウェイなど中国のスマホメーカーは5G対応のスマートフォンを販売しており、これらの販売が好調のようです。

  他方、懸念される点は、自動車販売が低調なことです。政府による減税等の施策もあって、2015~2017年にかけて販売台数の伸びが続きましたが、2018~2019年には販売台数が減少に転じ、2年連続で前年割れとなっています。年初には、今後回復に向かうと予想されていましたが、2020年入り後も、新型コロナウィルスの影響により、販売台数の落ち込みが続いています。中国の自動車販売が回復するかどうかは、トヨタなどの自動車メーカーのみならず、自動車関連財を生産するメーカーにとっても影響が大きく、今後の大きな注目点の一つです。

Ⅳ. 日本経済

  日本経済について、昨年、米中貿易摩擦等の影響により先行きの不確実性が高まり、大きなダメージを受けている印象があるかもしれません。確かに日銀短観における景況感をみると、製造業では悪い超に転じていますが、実際の輸出をみると減少には転じているものの、過去のリーマンショック時と比較すると、その落ち込みの程度はずっと小さいものに止まっています。自動車関連財については、中国における自動車販売の低迷により、輸出・生産とも落ち込みがみられていますが、先ほども話したとおり、IT関連財などでは海外の需給環境は改善の動きがみられています。

ITセクターでは、ITサイクルが改善局面に入ってきていると言われており、実際、半導体企業の在庫が適正化に向かいつつある中で、電子部品・デバイスの出荷・在庫バランスは足もと改善の動きがみられています。こうした中、アナリストによる大手半導体企業の2020年の売上予想(昨年12月時点)は、同9月時点の予想より上方修正され、前年比で2ケタのプラスに転じる予想です。実際、本年は中国を中心に5Gの基地局投資やスマートフォンの需要が増加に転じるとみられており、こうした流れを受け、DRAMやNANDなどの半導体市況も下げ止まりから回復に向かう動きがみられています。

 また、わが国の企業収益をみると、確かに昨年は減益となっていますが、売上高経常利益率の水準をみると、2019年度においてもなおリーマンショック前の水準を上回っています。ここ数年の景気回復による収益の改善により企業の内部留保には余裕があり、こうしたこともあって設備投資は確りと増加しています。

 設備投資の内訳をみると、世界経済減速の影響により、生産能力の増強などの機械投資の伸びは一服していますが、研究開発投資やソフトウェア投資などはしっかりと増加しています。

 研究開発については、自動車に関してはCASEと呼ばれるコネクテッド、自動運転、シェアサービス、電動化を進めるために大きな投資を続けておりますし、ソフトウェアに関してもSociety5.0とも言われますけども、AI、IOT、クラウドなど新たなIT技術の活用により、生産性向上や新規ビジネスの創出に取り組む動きが続いています。

 また、非製造業についても、省力化投資のほか、都市再開発など建設投資が増加しています。建設投資については、オリンピック後に大きく落ち込むのではないかとの質問をよく受けますが、東京では山手線の新駅・高輪ゲートウェイ駅周辺や東京駅・日本橋エリアなど再開発案件が目白押しですし、大阪においても、うめきた2期と呼ばれる梅田駅周辺の大型開発が続いており、あまり心配する必要はないのではないかとみています。

 この他、政府による公共投資も、先行指標である公共工事請負金額や受注高は増加に転じています。こうした中、昨年末には政府により追加の経済対策も打ち出されており、公共投資は、当面の間、日本経済の成長を下支えするとみています。

 秋田県経済をみても、建設業者の景況感は良好です。県内では、風力発電設備の工事のほか、公共関連では、雄物川の河川復旧工事、日本海沿岸東北自動車道、成瀬ダム、鳥海ダム建設の工事が進んでおり、工事量は高水準で推移しています。

 内需のもう一つの柱である個人消費は、消費税増税前までは改善の動きが

続いてきました。皆さんに消費は増えていますかと聞けば、横這いですとの

答えが多いのですが、ここ数年、ペースは緩やかですが、消費は確りと増えています。

 消費税率引上げの影響については、引上げ後の反動減は前回より小さいとみています。その要因としては家計の増税負担が小さいことです。2014年の増税時には5%から8%に上げることで、家計には約8兆円の負担増になりました。これに対し、今回は消費税率の引上げ幅が2%で約6兆円の負担増に止まる中で、キャッシュレス決済によるポイント還元や幼児保育料の無償化等の政府による施策により、実質的な負担増は前回引上げ時の4分の1の約2兆円程度に止まるとみています。

 この点、コンビニはキャッシュレス決済を行えば、その場で2%分が値引きされることもあり、ほとんど影響は出ていません。スーパーも日用品で直前に駆け込みがありましたが、売上は昨年末にかけて前年を上回るところまで戻ってきており、全体として非耐久財はあまり心配ないと思っています。また、耐久財も、家電では、増税前にみられた冷蔵庫や洗濯機といった高単価商品の駆け込みの反動減について、徐々に販売が持ち直してきており、全体として反動減の影響は月を追うごとに和らいできています。

 ただし、自動車は、直前に目立った駆け込み需要がみられなかったにも拘わらず、増税後に販売が大きく落ち込んでおります。この要因としては、台風19号に伴い一部メーカーの生産に影響が及び、納期が遅れていることや、部品の不具合・リコールから一部メーカーの新型車の発売時期が3カ月程度、先送りになったといったことがあります。足もと台風の影響は一服し、2月からは新型車の販売も再開されることから、今後、どこまで回復するか見極めたいと思っています。

 この個人消費を支える雇用環境をみると、確かに製造業や関連の派遣の求人は減少していますが、依然として有効求人倍率は高値圏にあるほか、失業率も2%台と全体としては人手不足の状況が続いています。このように雇用環境が大きく改善しているにも拘わらず、消費の伸びが緩やかに止まる背景には、賃金の伸びが低いことがあります。賃金の伸びをみると、企業収益が高水準にある下で、最低賃金も高めの上昇が続いていることから、パートの時給は前年比2%に近い比較的高めの伸びとなっていますが、正社員の名目賃金の伸びは前年比1%程度に止まります。特に昨年は、世界経済減速の影響により減益となった製造業が多い中、賞与の改善が進まなかったこともあって、賃金の伸びは鈍化しています。

 もう一つ心配なのは、インバウンド消費の動向。ご承知のとおり日韓関係の悪化から韓国人観光客は落ちこみましたが、インバウンド客の約3割を占め、来日時の一人当たりの消費額の大きい中国人観光客の伸びが、韓国人観光客の落ち込みをカバーしていました。この点、今回の新型コロナウィルスの影響により、インバウンド消費は大きく落ち込むとみられ、実際に東京や大阪の百貨店売上は大幅な落ち込みとなっています。

 ただし、秋田県は、旅行客に占めるインバンドのウエイトが元々低いほか、国別にみても台湾からの観光客が多く、中国人観光客のウエイトはそれほど高くはないので、インバウンド消費の落ち込みの影響は、他の地域との比較では相対的に小さいと考えております。

 最後に金融政策についてお話しします。金融政策は、CPI(消費者物価指数)・前年比2%の「物価安定の目標」を目指し、金融緩和を行っていますが、物価上昇率は足もとにおいても0%台後半で推移しており、目標の達成にはまだ時間がかかる状況です。

 こうした背景には、一つはフィリップス曲線の傾きが緩やかとなり、需給ギャップがプラスにいっても、なかなか物価が上がり難くなっていることがあります。この背景として、わが国の潜在成長率が低下していることが指摘できます。すなわち、日銀スタッフの推計によると、80年代後半のバブル経済の頃、日本の潜在成長率は4%程度あったのに対し、足もとは0%台後半にまで低下しています。潜在成長率低下の要因の一つは、少子高齢化により労働投入量が減っていることですが、定年後の再雇用や子育て世代の女性が共働きをして労働に参画することで押し上げている面もあり、この下押しの影響は1990~2000年代と比較すると小さくなっています。また、前述のとおり、ソフトウェア・研究開発や省力化のための設備投資も増えていますので、資本投入量も一定程度、潜在成長率の押し上げに寄与しています。こうした中で、一番問題なのはTFP(全要素生産性)が一貫して低下していることです。この背景には、日本の企業の技術革新、イノベーションを生み出す力が低下していることがあると考えています。

 足もと、例えば、ソニーではスマホに搭載されるトリプルカメラなど画像センサーの技術で業績が大きく改善していますが、自動車のCASEの関連でも、電動化や自動化の分野で世界の潮流を牽引するような技術革新、イノベーションをわが国の企業が生み出していけるかが、今後の日本経済の成長率を引き上げていくうえで重要と考えています。

 なお、日銀では、昨年10月に「物価安定の目標」に向けたモメンタムの評価を実施し、その際に「海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が大きい」と公表しました。その後、米中通商交渉の進展やブレクジットの帰趨が決まり、これらに係るリスクは一頃より後退しているように伺われますが、他方で新たに新型コロナウィルスの影響が拡がってきており、下振れリスクが引き続き大きい状況に変わりはありません。

Ⅴ.  先行きのリスク


先行きのリスクとしては、第一に先進国における世界的なディスインフレの進行が挙げられます。米国では、GAFAに代表されるような企業が新たなビジネス、イノベーションを生み出していることもあって、日本やユーロ圏に比べると先行きの予想インフレ率は高めですが、それでもここ10年の間にディスインフレの傾向は続いています。また、ユーロ圏では、先行きの見通しは1%台前半に止まっており、ユーロ圏でも物価目標の達成は容易ではありません。こうした中で、ECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁は、1月24日の政策理事会の後に、2020年末まで金融政策の戦略的レビューを実施することを公表しており、今後、金融政策の枠組みが変わり得るのか、注目されています。

  第二に、世界的な企業債務の積み上がりが指摘できます。米国企業の社債残高は年々増加してきており、相対的に格付の低いトリプルB格の社債発行が増加しています。また、世界各国では、2018年の企業収益(EBIDA)に対する有利子負債残高の比率がリーマンショック前の2007年の時以上に高く、レバレッジが拡大しています。このことは、新型コロナウィルスの影響が拡大するといった金融・経済に対する負のショックに対する企業や市場の耐性が徐々に低下してきていることを意味します。

  第三に、製造業の景況感回復の遅れによる影響です。過去に製造業の景況感が後退した局面をみると、比較的短期間に回復した場合には、その影響は非製造業に及ばずに景気が回復に向かっています。他方、長期間に亘って製造業セクターの後退が続くと、雇用所得環境の悪化などを通じて、消費者コンフィデンスにもマイナスの影響が及び、非製造業セクターも悪化に転ずるという分析結果となっています。世界経済の減速は、既に1年以上に亘って続いていますが、仮に今後、新型コロナウィルスの影響が大きくなり、世界経済が一段と減速するようなことになると、日本の景気も後退局面入りする恐れがあります。従って、今後数ヵ月で中国経済が回復するかどうかが当面の世界経済の大きなポイントだと思っております。

私からの説明は以上となります。ご清聴ありがとうございました。

(文責:秋田人変身力会議 事務局長 永井 健)